「太陽光発電システム投資」という新たな資産運用の手段

語り手:FP不動産グループ代表 岡本裕史
自宅購入前の資金計画から、自宅購入後のアフターフォローまでで長くお客様に寄り添うことが強みのファイナンシャルプランナー。自社で住宅を購入していない方に対しても、お子様の教育資金計画、老後資産の形成、住宅ローンの返済計画、自宅のメンテナンス計画等々のサポートサービスを提供。不動産取引のプロであり、お金の専門家。
●所持資格
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー

インタビュアー:森永 康平
株式会社マネネCEO / 経済アナリスト
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾などアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、事業責任者やCEOを歴任。
現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)
日本証券アナリスト協会検定会員。

2019年6月に金融庁が発表した『高齢社会における資産形成・管理』という報告書の中で、夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯が年金に頼って暮らす場合、老後に約2000万円が不足するという試算が示された。

定年後は年金だけで生活できると考えていた人は相当数いたらしく、国民的議論にまで発展した。人生100年時代を迎えるいま、個人投資家はどのように資産運用をしていけばいいのか。

FP不動産グループ代表であり、ファイナンシャルプランナーの岡本裕史FPに話を聞いた。

投資は長期的な観点から無理のない範囲で

≪―――岡本さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、日本でも徐々に資産運用の必要性を感じる方が増えてきたように感じます。やはり今後は各自が資産運用をしていかないといけないのでしょうか?≫

金融庁の2000万円問題が1つのキッカケになったのは間違いないです。
ただ、2000万円という金額だけがクローズアップされて、話題先行したという印象です。
たしかに、今後は社会保障費が上がったり、年金給付額が下がったりなど逆風が吹くことには間違いありませんが、十分に蓄えがある人もいれば、2000万円以上老後資産が不足する人もいます。
ですので、各自が自分自身に当てはめて、どうしていかないといけないかを考えていかないといけませんね。たとえば、子どもが1人いる世帯でも、30歳の夫婦で小さい子どもが1人いる世帯と、50歳の夫婦で子どもは既に独立してしまった世帯とでは、必要になる金額は当然変わります。

 

≪―――FPとして働いていて、いまの個人投資家についてどのような印象をお持ちですか?≫

そもそも、自分がいくら必要なのか、家族がどれぐらい必要なのか、ということを把握していない人が多いですね。
FPという立場で見ると、世の中に数多くある金融商品から個人投資家が適切な商品を選ぶのは難しい。
だからこそ、何がやりたいのか、目標はなんなのか、という点を一緒に明確にしてあげないといけません。
日本人があまり投資に馴染みがないという点は私は違和感があって、ほとんどの日本人は銀行預金や保険というかたちで、資産形成はしているんです。
でも、利回りの観点から考えると、当然株式とか債券、投資信託などにも投資をしていかないといけない。
その段階に踏み込めている人は少ないのだと思います。

 

≪―――銀行の利子は限りなくゼロに近いですし、今後は口座維持手数料がかかってくるかもしれない。そう考えると、とりあえず銀行預金でいいや、という姿勢も今後は厳しくなってきますね。ただ、一方でやはり株や投資信託は元本が毀損するという怖さがあるのも事実ですよね。≫

それはその通りだと思います。ただ、私の場合お客様と話す際に、株や投資信託など商品の話から入ることはないです。最初に考えるのはアセットアロケーション(資産配分)とどれだけ投資に回せるのかという計算を一緒にしていきます。
資産運用に使えるお金がどれくらいあって、どれぐらいの時間軸で考えるのかを話し合いながら、投資先の地域や投資資産などを分散して投資して、効率的に資産を増やす方法を考えていきます。
私は森永さんと同じく子どもが3人いるのですが、学費のピークがある一定期間に集中するので、手元にある余裕資金を運用に回していますが、それでも全額は投資に回していません。FPとして、投資は長期の視点でやらないといけませんから、あくまで無理のない範囲でやっていける金額と方法を考えています。期間も10年、20年、30年というスパンで考えます。

「太陽光発電システム投資」って怪しいのでは?

≪―――銀行預金じゃだめで、株や債券、または投資信託で資産運用をしましょう、と言われても、日本株はアベノミクスの影響で右肩上がり、米国株も史上最高値を更新しているなかで、そろそろ過熱感もあります。一方で債券は利回りも低い。うまくアセットアロケーションを組んだとしても、20年、30年と長期に安定したリターンが取れるか不安です。他に何か新しい投資先はないですか?≫

株や債券以外にも、もちろん保険の積み立てなどで資産運用することは可能です。しかし、20年積み立てても、積み立てた投資資金の1%ぐらいしかリターンがないケースもあります。それでは積立投資の意味がない。そこで、保険業界では外貨保険や変額保険など、お客様にリスクをとってもらって、その分期待リターンを上げてもらっている現状です。
とはいえ、やはり保険だけでは厳しいと思います。最近はiDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型の確定拠出年金もありますから、うまく制度を活用して、節税しつつ投資から発生した利益が非課税になるという法制度を活用した方がいいのはいうまでもありません。
 FPとしては、ある程度の確実性があり、かつ長期で投資することが前提になっている商品をおすすめしやすいので、最近は「太陽光発電システム」投資も選択肢の1つとして紹介しています。

 

≪―――太陽光発電システムですか?失礼ですが、なんだか怪しいイメージがあります。資産運用の選択肢として大丈夫なのでしょうか?≫

たしかに、太陽光発電に関する企業がお金だけを集めて、実際には投資をしなかったり、そのまま倒産したりした事例もありますので、詐欺のような印象を持っている人はいるかもしれません。でも、投資に係るリスクとして、太陽光発電だけに生じるものではないと思います。株式投資だって投資先が倒産してしまえば、投資したお金はなくなりますから。また、太陽光発電の場合は、メガソーラーの開発で自然が破壊されているなどの報道が悪いイメージを助長しているかもしれません。逆に、太陽光発電システムに実際に投資をして、損をしたという話はそこまで聞かないかと思います。

 

≪―――太陽光発電への投資は一時期流行っていましたが、もうブームが過ぎた印象もありますが。≫

たしかに、もともとの売電価格が40円だったのに対して、現在は14円ぐらいまで落ちています。しかし、ソーラーパネルの価格が下落し、発電効率が上昇していることから、この値段でも十分に投資になります。

 

≪―――なるほど。具体的にどれぐらいの利回りが期待できるのか。そして、そもそも個人が投資できるほど身近なものなのでしょうか?ある程度のまとまった資金がないと、太陽光発電システムに投資できないような気もします。≫

まず、利回りについてですが、表面利回りで10%ほどが期待できます。ローン金利などを控除しても、実質7%ぐらいの利回りは期待していいでしょう。
 そして、手元に一切現金がなくても、ローンを組むことで投資が可能になります。ローンの金利は2.45%ぐらいですが、もっと安いものもあります。地銀や公庫だと1%台のローンもありますから、そこまで気にする必要はないでしょう。会社員でも十分にローンは通ります。カーローンと同じで、ソーラーローンという名目で融資を受けることになります。
 太陽光発電システムへの投資の場合、経済産業省主導の再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電力会社が買い取ることを義務付ける制度上での投資ですから、そこまで大きなリスクを負うわけではありません。場所を活用する投資という観点では不動産投資に似ていますが、不動産だと空室リスクなどもありますし、投資期間中にかかる経費もかなり重いですが、その点でも太陽光発電システム投資は投資期間中にかかる経費も少なく、とても効率的な投資対象だと考えます。

45歳にいちばんオススメ!

≪―――これまでの話を聞いていると、すごくいい投資商品にしか思えません(笑)ただ、世の中にそんなおいしい話はないと思います。もう少し具体的にリスクだけを説明してください。≫

もちろんリスクはあります。たとえば、天災地変といったものです。また、何かしらの理由でパネル設置場所に日影がかかってしまえば、そもそもの発電量が担保できなくなりますし、パネル設置会社の倒産リスクなどもあります。しかし、このようなリスクは他の商品にもあるわけですので、しっかりした業者とお付き合いすることによって避けられるリスクです。
火災保険や動産保証は投資の際に払うメンテナンス費用に全て含まれていますので、本当に心配であれば、地震保険をオプションで追加することも考えられます。ただ、実際に地震保険にまで加入している人は非常に少ないですね。北海道の両端にある太陽光発電システムにそれぞれ投資している方の話では、昨年北海道の中央で大きな地震があった際も、全く被害はなかったといっていました。パネルを設置している土地に地割れが起きるような被害がない限りは大丈夫でしょう。自然災害によって壊れたもののメンテナンスや、売電できなかった期間の逸失利益は投資内容のなかで保証されています。

 

≪―――なかなかいい投資商品な気がしてきました。具体的にはどのような投資家におすすめなのでしょうか?≫

いちばんオススメなのは45歳の夫婦でしょうか。この投資は20年間の売電収入を得ることになりますが、15年のローンを組むのが一般的なので、最後の5年間で一気に回収をすることになります。そうすると、45歳ではじめると60歳までは働きながらローン返済をして、60歳から65歳までの5年間は嘱託などで働くことで一気に給与所得が減り、年金がまだ出ないわけですから、副収入として売電収入を受け取るということが可能になります。
 住宅を購入した後の35歳の夫婦もいいかもしれません。住宅を購入する前に太陽光発電システムに投資するためにソーラーローンを汲んでしまうと、住宅ローンを組む際に不利に働く可能性がありますが、ソーラーローンは住宅ローンがあっても審査に大きな影響はありません。35歳だとちょうど売電収入の回収のタイミングで、子どもの学費が一番かかる大学生になっているかもしれません。
 あとは、退職金が一気に入ってきた方も、退職金の半分ぐらいを投資してみてもいいかもしれませんね。ちょうど自分が老人ホームや介護施設に入るぐらいのタイミングで、費用に充てられるかもしれません。そうすることで、配偶者や子ども、孫にも経済的な負担を追わせなくて済むかもしれません。

<聞き手・文 / 森永 康平(経済アナリスト)>

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